ここでは Linux (x86_64) に TeX Live 2020 をインストーラー install-tl
を使ってインストールする方法を説明します。FreeBSD, NetBSD などでもほぼ同じですので,参考にしてください。
なお,各 Linux ディストリビューションが用意しているパッケージマネージャから TeX Live をインストールすることもできます。この方法には,install-tl
を使う方法と比べると次のような相違点があります:
/usr/bin
以下などに配置されるので,自分で PATH
を追加する必要がない。install-tl
を使う場合と異なるため,他の人が TeX Live について書いた記事を読むときに混乱することがある。tlmgr
を使って TeX Live の各パッケージを更新したり新規に追加したりすることはできない。パッケージマネージャからのインストールについては,ディストリビューション毎にやり方やインストール後の細かな仕様が異なり,網羅的な解説が困難なため,この文書では扱わないことにします。
まず,インストーラーをダウンロードします。TeX Live のインストーラーは ISO イメージとネットインストーラーの2種類が提供されています。
この説明だけを読むとネットインストーラーを使えばよいように思われますが,残念なことにネットインストーラーを使うと環境によっては途中でパッケージのダウンロードに失敗して終了してしまうことがあります。さらに悪いことに,ネットインストールにはそれなりに時間がかかるのに対し,途中終了した場合にはそこから再開することができず,最初からやり直しになってしまいます。ネットワーク環境に問題がない限りは最初から ISO イメージをダウンロードしてしまった方が無難です。
以下ではターミナルからダウンロードとインストーラの実行を行います。ダウンロードは Wget があることを前提にしていますが,ない場合は curl や Web ブラウザで代用してももちろんよいです。
プロキシを使う必要がある場合は,次のようにして環境変数を設定しておいてください。
$ export http_proxy=http://<host>:<port>
$ export https_proxy=http://<host>:<port>
ISO イメージをダウンロードします。適当な作業ディレクトリで次のようにします。
$ wget -c http://mirror.ctan.org/systems/texlive/Images/texlive2020.iso
-c
オプションをつけることで,途中で接続が切れてしまった場合は同じコマンドを打てば再開できます。
ダウンロードが終わったらマウントします。
$ mkdir install-tl-2020
$ su
# mount -o loop texlive2020.iso install-tl-2020
# cd install-tl-2020
Tarball をダウンロードして展開します。適当な作業ディレクトリで次のようにします。
$ wget http://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet/install-tl-unx.tar.gz
$ tar zxf install-tl-unx.tar.gz
$ cd install-tl-2020*
$ su
管理者権限のまま,インストーラーを起動します。(ネットインストーラーでダウンロードがうまくできない場合は,あとに書いてある「ミラーサーバーの選択」も見てください。)
# ./install-tl
======================> TeX Live installation procedure <=====================
======> Letters/digits in <angle brackets> indicate <=======
======> menu items for actions or customizations <=======
Detected platform: GNU/Linux on x86_64
<B> set binary platforms: 1 out of 6
<S> set installation scheme: scheme-full
<C> set installation collections:
40 collections out of 41, disk space required: 6516 MB
<D> set directories:
TEXDIR (the main TeX directory):
/usr/local/texlive/2020
TEXMFLOCAL (directory for site-wide local files):
/usr/local/texlive/texmf-local
TEXMFSYSVAR (directory for variable and automatically generated data):
/usr/local/texlive/2020/texmf-var
TEXMFSYSCONFIG (directory for local config):
/usr/local/texlive/2020/texmf-config
TEXMFVAR (personal directory for variable and automatically generated data):
~/.texlive2020/texmf-var
TEXMFCONFIG (personal directory for local config):
~/.texlive2020/texmf-config
TEXMFHOME (directory for user-specific files):
~/texmf
<O> options:
[ ] use letter size instead of A4 by default
[X] allow execution of restricted list of programs via \write18
[X] create all format files
[X] install macro/font doc tree
[X] install macro/font source tree
[ ] create symlinks to standard directories
[X] after install, set CTAN as source for package updates
<V> set up for portable installation
Actions:
<I> start installation to hard disk
<P> save installation profile to 'texlive.profile' and exit
<H> help
<Q> quit
Enter command:
このような画面が出ます。書かれている通りにコマンドを入力すると設定を変更したりインストールしたりできます。よくわからなければ,とにかく I
を入力して Enter を押せばインストールが始まります。
S
を入力して Enter を押すと,scheme を選択できます。初期状態では scheme-full,つまりほぼ全てのパッケージをインストールする設定になっています。C
を入力して Enter を押すと,scheme よりも細かくどの collection をインストールするかを選択できます。初期状態では Windows 専用のプログラム以外の全てがインストールされます。D
を入力して Enter を押すと,インストール先などのディレクトリの設定ができます。TeX Live 2019 以前のバージョンが既にインストールされている場合も共存できるようになっています。O
を入力して Enter を押すと,細かなオプションの設定ができます。英語がよくわからなくて嫌な場合は,
# ./install-tl -gui
として GUI モードで起動すると環境変数に設定された言語の GUI を使ってインストールできます。日本語もあります。ただし,Tcl/Tk がインストールされている必要があります。
インストールはしばらく(環境によっては長時間)待てば終わります。インストールが終わると次のメッセージが出ます。
Welcome to TeX Live!
See /usr/local/texlive/2020/index.html for links to documentation.
The TeX Live web site (https://tug.org/texlive/) contains any updates and
corrections. TeX Live is a joint project of the TeX user groups around the
world; please consider supporting it by joining the group best for you. The
list of groups is available on the web at https://tug.org/usergroups.html.
Add /usr/local/texlive/2020/texmf-dist/doc/man to MANPATH.
Add /usr/local/texlive/2020/texmf-dist/doc/info to INFOPATH.
Most importantly, add /usr/local/texlive/2020/bin/x86_64-linux
to your PATH for current and future sessions.
Logfile: /usr/local/texlive/2020/install-tl.log
ISO イメージからインストールした場合はアンマウントします。
# cd ..
# umount install-tl-2020
最後のメッセージで大事なのは Most importantly, ...
の部分です。TeX Live のバイナリは /usr/local/texlive/2020/bin/x86_64-linux
以下にインストールされるので,ここに PATH
を通さなければ使うことができません。例えば Bash を使っているならば次のようにするとよいでしょう(管理者権限と普段のユーザーの権限の両方でやること)。
$ echo 'export PATH=/usr/local/texlive/2020/bin/x86_64-linux:$PATH' >> ~/.bashrc
PATH
を通したら,ターミナルを再起動して動作確認をします。
$ platex -version
e-pTeX 3.14159265-p3.8.3-191112-2.6 (utf8.euc) (TeX Live 2020)
kpathsea version 6.3.2
ptexenc version 1.3.8
Copyright 2020 D.E. Knuth.
There is NO warranty. Redistribution of this software is
covered by the terms of both the e-pTeX copyright and
the Lesser GNU General Public License.
For more information about these matters, see the file
named COPYING and the e-pTeX source.
Primary author of e-pTeX: Peter Breitenlohner.
このように “TeX Live 2020” が入ったバージョン情報が表示されればうまくできているでしょう。platex: コマンドが見つかりません
と出る場合は PATH
を通すのに失敗しているか,インストールそのものが失敗しています。インストール先のディレクトリを変更した場合は,PATH
を通す先もそこにする必要があることに注意してください。
何も指定しなかった場合,ネットインストーラーは一番近いミラーサーバーを自動的に判定して接続します.環境やその時点での各サーバーの状況によってはこれではうまくいかない場合があります。起動時に -select-repository
オプションをつけると,どのミラーサーバーからダウンロードするかを選択することができます。
# ./install-tl -select-repository
ミラーサーバーをコマンドで直接指定したい場合は -repository
オプションを使います。-select-repository
の一覧に表示されないサーバーやローカルのディレクトリを指定することも可能です。
例えば,JAIST のサーバーを使いたい場合は次のようにします。
# ./install-tl -repository http://ftp.jaist.ac.jp/pub/CTAN/systems/texlive/tlnet
管理者権限で
# tlmgr update --self --all
を実行すれば,インストールされているパッケージが最新版へと更新されます。ミラーサーバーを選択したい場合は
# tlmgr option repository <location of tlnet>
とすると,以後は設定したサーバーからダウンロードするようになります。
更新した結果,バグやパッケージ間の不整合が生じてうまく動かなくなることがあります。このような場合は restore
を実行することで前のリビジョンに戻すことができます。
例えば luatexja
を restore
したいとします。まずは単にパッケージ名のみを与えれば
# tlmgr restore luatexja
Available backups for luatexja: 54564 (2020-08-01 15:01)
のように利用可能なリビジョン番号が表示されます。そこで,さらにこのリビジョン番号を与えることで戻すことができます。
# tlmgr restore luatexja 54564
Do you really want to restore luatexja to revision 54564 (y/N): y
Restoring luatexja, 54564 from /usr/local/texlive/2020/tlpkg/backups/luatexja.r54564.tar.xz
running mktexlsr ...
done running mktexlsr.
tlmgr: package log updated: /usr/local/texlive/2020/texmf-var/web2c/tlmgr.log
他にも,パッケージを追加でインストールしたり,アンインストールしたり,パッケージの情報を見たり,検索したりできます。詳細は
$ tlmgr help
を見てください。
install-tl
と同様に tlmgr
にも GUI が用意されています。ただし,Perl/Tk がインストールされている必要があります。日本語での表示も可能です。
# tlmgr gui
最近は新しい GUI として tlshell
が開発されています。こちらは Tcl/Tk が必要で,日本語での表示も可能です。
# tlshell
TeX Live 2019 などの旧バージョンがもう不要な場合は,単に削除するだけでアンインストールが完了します。管理者権限で実行するので,コマンドを打ち間違わないように要注意。
$ su
# rm -rf /usr/local/texlive/2019
なんらかの理由でインストールした TeX Live 2020 を消したい場合,2018 以前のバージョンを消したい場合も同様で,上の 2019 の部分を該当バージョン番号に変更して rm
を実行してください。